淀代のいえ

RESIDENCE YODOSHIRO

大阪市内に建つ大きな古民家。

戦前に建てられたこの住まいは幾度かの戦火・震災を乗り越え今までその姿を変えずに住み継がれていました。

建物は質が高く、建築当時の最新の技能がふんだんに使われていることが工事の中でも感じられました。

昔の佇まいを残したまま、現代の住まいの性能を得たこの住まいは今後改めて100年以上の時代を乗り越えられる計画をしたつもりです。

時代に流されるのではなく、普遍的な価値を持った美意識を次の時代に伝える建物になると確信しています。


建物との対話。既存の雰囲気を活かす。


良質な建物の改修の時に、既存の雰囲気をどこまで残すかというのは大きな課題だと思います。

耐震性や断熱性の向上のために必要になる間取りや意匠性の変更をどこで解消するか。

そういったことを考えるときに建物との対話が行われると感じます。

建築当時の人たちの気持ちを考えながら、温故知新。今の最善を尽くせるよう設計します。

 

現代の生活を古民家の中で解く


 

2022年現代の生活を100年前の古民家の中で再現するには色々な無理が生じることになります。

そんな中でも、古民家の持つ縮尺に寄り添うことでバランスを取りました。

家具の高さを低く設定する。材料を無垢材。国産材でしつらえる。既存の建具を活かす。鴨居の高さを既存の高さを踏襲する。

少しずつの気配りがあることで古民家の中に新しい生活を受け入れてもらえるように感じます。

 

古民家に合う住宅設備


住まいである以上住宅設備は快適性・利便性が求められるべきです。

ただ、陳腐なものを選定しては相性が良くないです。バランスが大切です。

今回、浴室はハーフユニットバスを採用しました。天井は既存の天井を活かして漆塗り。壁は新しいサワラの板に漆を塗っています。

トイレは既存の天井と間取りを活かして便器だけ更新しています。内装は木を使って上品に仕上げました。

 

開口部の断熱性・利便性


古民家の持つ大きな問題の一つに外部に面する開口部があります。

この時代の建物は大抵シングルガラスのガラス框戸と木板の雨戸です。雨戸は出し入れがしにくくなっていることが大半です。

これは断熱性・気密性が大きく不足するのと、開け閉めの大変さが問題です。

ただ、このガラスは意匠的には非常に魅力的ではあるのです。

 

これを普通にアルミサッシなどに更新してしまうと建物の持つ雰囲気が壊されていまいます。

今回はLow-e複層ガラスの木製建具を使い、雰囲気を活かしながら断熱性を向上させました。

雨戸は撤去し、格子網戸をつけることで通風と防犯性を向上させています。

 

応接室を活用した防音室


元々あった洋間は応接室でした。

応接間として使わなくなったこの室を防音室として改修しました。

防音室と言っても無垢材を使って古民家の雰囲気と合わせてモダンな防音室になりました。

 

長期優良住宅認定、大阪市修景事業認定 取得


今回は基礎をベタ基礎にし、耐震性能を向上させています。また断熱性能も非常に高いレベルで改修しています。

長期優良住宅(増改築版)も取得しています。性能向上リフォームをして、その認定がもらえたという今回の計画は住まい手にとっても大きな安心感も得られたと思います。

 

また、大阪市の修景事業も採択しています。

大阪市の街並みを保全するための建物として選ばれたことは非常に光栄に思います。

100年後も過去の、そして今の時代の空気を伝える建物として残ってほしいと考えます。

 


所在地:大阪府大阪市

設計監理:WASH 建築設計室

構造:木造平家建て

施工:株式会社 山本博工務店

竣工:2022年12月

 

・長期優良住宅認定(増改築板)

・長期優良住宅化リフォーム 採択

・大阪市修景事業

・奈良の木を使用した住宅への助成制度 採択

【主な仕上】

床   しなの栗フローリング オイル塗装

    畳敷

内壁  漆喰塗り(マーブルフィール)

    杉本実板(ア)12

天井  既存天井貼り直し

    漆喰塗り

外壁  杉本実板(ア)12 オイル塗装、黒漆喰塗り

屋根  既存瓦のまま

軒天  既存軒天 オイル塗装



問合先

WASH建築設計室

〒565-0821

大阪府吹田市山田東4-41

代表TEL:06-4980-4224

業務範囲

大阪、兵庫、滋賀、奈良、京都、和歌山の関西圏を中心にしています。

全国対応可能ですのでご相談ください。