RESIDENCE SAKURA SANDAI
築年数不詳の立派な古民家と、築約40年の離れのある土地がありました。
古民家の方は屋根が崩れてから長年放置されていて再生することは叶いませんでした。
残った離れを活かして、古民家のあった場所に新しく増築をすることになりました。
解体した古民家は出来うる限り材料を使えるように工夫し、新しい住まいに活かしていきました。
そんな三代の住まいを織り交ぜた新しい住まいは時代の流れを考えさせてくれました。
建物をつなげる。生活をつなげる。
元々の離れの空間は改修工事。新しい増築の空間は新築工事になります。
その二つの空間をつなぐにあたって、あえて斜めに建物を配置してつないでいます。
中間の領域は時代の間を感じる緩衝としての役割を果たしています。
また改修部分はプライベートな空間の寝室や和室です。斜めに配置することで増築部分の居間や食堂と視線や動線を柔らかくつなぐことができました。
建物の真ん中に象徴的に立つ八角柱は国産の桜材です。
床はサクラのフローリング。床框やカウンターには国産の樺を使っています。
樺はよく桜とよく似ていてカバザクラと呼ばれることもあります。
そんな桜を基調とした材でできたこの住まいは、時代の流れを表す桜の印象とよく合います。
住まいに合わせた造作家具
洗面台は無垢のタモ材を使った造作です。
台所はシステムキッチンですが背面家具やカウンターを造作でつくり手作り感のある仕上げになります。
照明器具も構造材と絡めてデザインしてシンプルながらモダンな印象の空間になりました。
薪ストーブによる煖
薪ストーブが建物の真ん中に据えられて家族に暖をもたらしてくれます。
薪ストーブの薪として、解体した古民家の構造材が使われています。
構造材はほとんどが腐朽しており建材としての再利用はできませんでしたが、燃料として最後まで家族を温めてくれました。
予備室としての二階
二階は将来の子供室として計画しています。
古民家としての街並みを残すため、高さは極限まで抑えた低い低い空間にしています。
ただ、勾配のある天井で高さにメリハリがあるため狭さを感じない室になります。
建築確認申請・長期優良住宅認定 取得
既存建物の離れは建築確認申請を取得していませんでした。
今回の増築工事を機に、既存離れを含めた全体として建築確認申請を取得しました。
現行の建築基準法に適合させることができたということは、古民家改修にとってはとても重要なことです。
加えて長期優良住宅(増改築版)も取得しています。
耐震性・断熱性能も確保されています。
性能向上リフォームをして、その認定がもらえたという今回の計画は住まい手にとっても大きな安心感も得られたと思います。
所在地:京都府南丹市
設計監理:WASH 建築設計室
構造:木造二階建て
施工:有限会社 倉昇工務店
竣工:2022年4月
・確認申請取得
・長期優良住宅認定(増改築板)
・長期優良住宅化リフォーム 採択
・奈良の木を使用した住宅への助成制度 採択
【主な仕上】
床 サクラフローリング オイル塗装
既存畳敷
内壁 EP塗装
杉本実板(ア)12
天井 Jパネル(ア)36
既存天井のまま、構造用合板のまま
外壁 杉板押縁仕上げ オイル塗装、 ガルバリウム鋼板小波板
屋根 ガルバリウム鋼板縦ハゼ葺き、既存瓦のまま
軒天 Jパネル(ア)36、構造用合板、既存軒天オイル塗装