京都府で工事が始まっている南丹市のいえ。
構造材の番付を行うために大阪府堺市の木材団地にある中畑木材にやってきました。
設計した建物は構造材の大半が「あらわし」となり、室内から見えてくることになります。
無垢の木材は一本一本異なります。
同じ等級で注文をしていても、節が多いものから少ないものまであります。色味も違います。
また目が素直なもの、少し捻っているものなどさまざまです。
つまり、どの部材を間取りのどこに使うかということが、建物の仕上がりに大きく影響してきます。
WASH建築設計室では設計自らでこの番付を行うことで意匠性とコストのバランスをとっています。
これを木配りと呼んでいます。
中畑木材の加工場には、南丹市のいえで使う構造材が届いていました。
今回は奈良県吉野の杉材、ヒノキ材を使います。吉野のWOOD BASEに材料を注文させてもらいました。
「奈良の木を使用した住宅への助成制度」を活用させてもらっています。
中畑木材のスタッフにリフトである程度移動してもらってから、手で一本一本並べていきます。
まずは材料が大きく量も多い梁材から木配りを行うことにしました。
梁を含む横架材の材料は基本的に4Mの材料が多いので、なかなか重たいです。
今回は学生さんが一人お手伝いに来てくれました。
インターンシップにも来てくれていた学生です。
重労働なので、手伝ってもらえるととても助かります。
同じ樹種で同じ大きさでも木によって重さが全然違うことを感じてもらえました。
まずは梁の材料が並べ終えられました。
梁を並べる時のコツは、最終的に下面になる方を上に向けて並べることです。
木は山の斜面に生えている関係で、「背」と「腹」というものがあり、「腹」が下面になります。
興味があれば調べてみてください。
なにせ見分けられるようになるまで少し時間はかかりますが、とても大事なことです。
設計のコツは、できるだけ同じ大きさの材料で軸組を考えることです。
私は梁の高さを240mmを基本に設計しています。
例えば、構造的に210mmでいい部分も、大きめの240mmにしておきます。
そうすることで、同じ大きさの材料が多くすることができます。
同じ大きさの材料が多ければ、材料の選択肢が増えてより木配りの効果が出てきます。
意匠的に絶対綺麗にしたい部分や、収納などでほとんど見えてこないので見た目は気にしない部分など、わかりやすいところから順番に材料を配っていきます。位置を決めたら、伏図の通り芯や上下の向き、階層など必要な情報を書き込んでいきます。
荒木の状態でする場合はチョークで書いてしまいますが、今回はモルダーが終わった状態でしたのでテープに書きました。
半日の作業では梁を終えるまでで時間がなくなってしまいました。
柱や垂木などは人数が少なくてもできるので、後日行うことにしました。
単純に体力を使いましたし、頭も使うのでとても疲れます。
でも、この作業が建物の仕上がりに直結しますので、とても意味のある工程になります。
無垢の木材を扱う設計者として、実際に家の骨組みとなる構造材を肌で触り重たさを感じるということはとても大切だと考えています。
木の家をつくる際に生じる材料の選定や配置の決定などを人任せにしたり、またそういったことを考えないで済むような家づくりにならないよう、これからもこの作業は大切にしていきたいと思っております。
場所を使わせてくれ、材料の移動を手伝ってくれた中畑木材さん、ありがとうございました。
これからこの材は加工され、基礎工事が終わった現場へと搬入されます。
とても楽しみです。
WASH建築設計室 日野弘一