既存建物の基礎は「無筋の布基礎」です。
今回の改修工事では、これに「鉄筋コンクリートのベタ基礎」を抱き合わせで補強する計画なのです。
なんとなく考えたら、改修後の基礎は「鉄筋コンクリートのベタ基礎」になると思いませんか?
しかし、改修後の基礎は「鉄筋コンクリートのベタ基礎」ではなく、「無筋の布基礎を鉄筋コンクリートのベタ基礎で補強したもの」となります。
「鉄筋コンクリートのベタ基礎」は建築基準法で内容が明記されているので、役所も建築基準法に当てはめて適法かどうかを判断できるのですが、「無筋の布基礎を鉄筋コンクリートのベタ基礎で補強したもの」というと建築基準法に明記れておらず、適法かどうか判断ができないと言うことなのです。難しいところですが、改修後の基礎を適法かどうかの判断はしてもらえない結果になってしまいました。
しかしそれでは建築基準法に適合しているかどうかがわからず、つまり確認申請がおりません。それは大問題です。
結論的に、今回は改修棟は既存の布基礎だけで建築基準法に適合することとなりました。
建築基準法で、布基礎の規定で「一体の鉄筋コンクリート造とすること」と明記されています。
つまり原則鉄筋が必要で、無筋の布基礎ではNGです。
しかし、その後に、「ただし、地盤の長期に生ずる力に対する許容応力度が一平方メートルにつき七十キロニュートン以上であって、かつ、密実な砂 質地盤その他著しい不同沈下等の生ずるおそれのない地盤にあり、基礎に損傷を生ず るおそれのない場合にあっては、無筋コンクリート造とすることができる。」とされています。
今回、地盤調査の結果、地盤の許容応力度は70kNあることが確認されていました。
それに加えて、沈下量の計算書を作成して添付することで、不同沈下の生ずる恐れがないという事を示すことで既存の無筋の布基礎だけで建築基準法に適合するという事で確認申請が通りました。
改修で行う基礎補強はあくまで付加的なものという扱いになります。
増築の場合、確認申請についての既存部分の解釈がとても複雑になりますが、基礎についてのこの考え方はとても勉強になりました。
文章が長くなりましたが、なんせこれで改修棟の基礎の補強工事が進めることができます。
改修棟の床組を撤去した状態です。
既存の基礎は無筋の布基礎ですので地盤面は土が見えています。
基礎の上の土台はそのまま残し、土壁も再利用します。
基礎の鉄筋を組んだ状態です。
地盤面には防湿フィルムが敷かれ、鉄筋が増築部分同様ベタ基礎のものが組まれます。
既存の基礎と新しい補強基礎は原則一体となるように差し金が刺されています。
ベースコンクリートが打設されています。
床下の防湿対策ができ、長期優良住宅の要件に適合するようになっています。
こうして改修部分も増築部同様ベタ基礎が完成しました。
申請の事で色々と大変でしたが、こうして出来上がるとすっきりとして建物が整然とした雰囲気になります。
これでまずはひと段落。ここから上部構造の補強が始まります。
WASH建築設計室 日野弘一