滋賀県の蒲生郡日野町の古民家の調査のお手伝いに行ってきました。
兄弟子にあたるトヨダヤスシ建築設計事務所の豊田さんに呼ばれて行ってきました。
私は得意の?小屋裏と床下の調査を担当しました。
まずは小屋裏の調査です。
母屋の小屋裏は二階が物置として使われていて構造材が露出していました。
とても調査しやすい環境です。雨漏りなどの異常があってもすぐに発見できるので、私はとてもいいと思います。
この建物は野地は黒く、板張りの部分と竹の部分がありましたが所々新しい材料が使われています。
これは太陽光パネルを載せるための受け材で最近足されたものであることがわかります。
構造材の横架材は松脂が出ているので松だと思われます。こういった特徴も記録していきます。
材料が黒くて目立ちませんが雨漏りを確認しました。
写真に写すとはっきりわかるのですが、現場の暗い雰囲気だと意外と見落としそうになります。
含水率を測定したところとても低い状態にあり、今濡れている感じではないので雨漏りの跡だと思われます。
構造躯体のズレは、接合部の以上から判断することができます。
写真を見てもらったらわかりますが、柱が少し抜けていることがわかります。
桁も腰掛け鎌継が数センチ外れています。
構造躯体がずれていることがわかります。地盤がこの部分が弱いことなどが考えられます。
いますぐに不具合が生じるとは断言できませんが、金物などによる補強が望ましいです。
構造材だけでなく天井面にも色々な痕跡が残っています。
左の写真は小動物が暮らしていた痕跡です。糞や食べのののカスが残っています。
屋根の隙間から侵入することがよくあります。配線をかじったりする危険性があるので注意が必要です。
右の写真は天井面に土がたくさん落ちています。
屋根瓦を土で拭いている時、屋根が劣化すると土が落ちるので何か問題が生じていないかチェックが必要です。
こういったことを確認しておくと、内部や外部の劣化と関連付けることができて建物の本質的な問題を洗い出すことができる可能性が高まります。
次は床下です。今回の床下は玉石基礎です。
地盤面は土で、柱や束などの構造材は石の上に乗せられています。
比較的近い時期に床のやり替えをされているようで、床組の材料は新しく床も部分的にプラ束に変えられていました。
一見すると綺麗な状態なのですが、かつて床はシロアリなどの被害で大きく劣化したことが考えられます。
環境を改善しないとまた同じ問題が生じるかもしれません。
左の写真は柱です。柱が床の下まで伸びて地面まで達しています。
この材料は簡単には交換できませんので昔の材料のままだと考えられます。
足元に板が挟み込まれているのはそこが腐っていたのかもしれません。
含水率が非常に高くなっています。現状では打診しても異常は無かったですが、リスクのある状態ではあります。
増築部の床下はコンクリートが使われています。
写真を見ていただくとわかるとおり計画的に補強されているようには見えず、立ち上がりに入ったクラックからも無筋基礎の可能性があります。
主要な壁の下の材料など、交換が難しい部分は劣化したままの材料が使われています。
シロアリによる蟻害です。主要構造部ではないですが、床がたわんだりする可能性があります。
悪いことばかり書いてしまいましたが、かなりの年数が経っている建物です。すぐに問題が生じることはないかと思われます。
ただこういった問題の現況を確認することで、改善する場合的確な判断を行うことができるので調査はとても重要です。
古民家の調査では前に使っていたものを処理せずにそのまま残していることがよく見受けられます。
今回の建物はわかっているだけで少なくとも明治初期、地域の方のお話では江戸時代からの建物と言われています。
過去の生活が垣間見えて、色々と想像を膨らませるととても楽しいです。
床下の調査は大変ですが、とても充実した経験になります。
地上では豊田さんが建物の傾きの調査をしています。
他にもバリアフリー の調査や室内外の劣化調査、防火の調査など多岐にわたる調査をしました。
こうして大体3時間強で建物全ての調査を終えることができました。
呼んでいただきありがとうございました。
WASH建築設計室 日野弘一