非常勤講師として勤めている大阪工業技術専門学校OCTの大工技能学科の卒業制作の2019年度の展示がありました。
今年も学生による力作がたくさんできあがりました。
作品はたくさんあるので二回に分けて紹介したいと思います。
屋根付ベンチ1
作品番号1番は屋根付のベンチとなっていますが子供の遊具です。
約1M上がった床まで、階段や橋を渡って移動することができます。
作品番号2番の屋根付ベンチ2とセットの作品で、橋でつながっています。
これは泉佐野の公園に寄贈される作品です。
見所はまず建物四方に使われた丸太をうまく加工しているところです。
四隅全てに丸太を使ってきっちり合わせてきているだけでもとても高い技術を要します。
また、屋根も単純ではなく、隅木が中央の束に刺さる形になっています。屋根にも丸太が使われています。
その他、手すりの格子や階段も丁寧に造られている非常にレベルの高い作品となりました。
屋根付ベンチ2
作品番号2番も屋根付のベンチとなっていますが、作品番号1番とセットの作品です。
作品番号1が遊具として造られていますが、こちらは保護者が休憩するためのベンチになります。
遊具と高低差を持ってつなぐことで、こちらにまで子供が楽しく走ってくることが想像できます。
一番の見所は屋根の隅木です。
一見普通の屋根に見えますが、隅木が上から見た時に45度ではなく、振れ隅になっています。
これはとても高度な理解がないとできませんが、やってのけました。
他にも木格子も丁寧に仕上げていますし、階段は二枚の板を剥いで一枚にするなどしています。
作品番号1と合わさって、一つの大きな作品となりましたが学生の制作中の姿勢を含めてとてもいい作品になりました。
屋根付ベンチ3
作品番号3番も屋根付のベンチです。
これはしっかりとベンチまで造っています。
シンプルな構造ゆえに使い勝手がとても良さそうです。
今までの二年間で学んできた要素をしっかりと組み込み、一つの作品にまとめ上げています。
丸太の柱を刻む時に実はミスがあったのですが、機転を効かせた方法で解決したのが私は評価が高かったです。
一坪テラス
作品番号4番は遊具としてのテラスです。
これはコンパクトな作品なのですが、デザインが明快でとても綺麗な作品になりました。
また、丁寧に作業をする学生のチームであり、非常に精度が高いです。
一本の柱に何本も横材が刺さっていますが、これが組み立てを難しくしましたがしっかりとやり切ってくれました。
木格子はよく見たら網目状になっているのがわかると思いますが、これはとても難しいです。
上端の手すりの交差部も非常に工夫していて難しい納まりだったのですが、試作や原寸図面などを丁寧にすることで実現してくれました。
今井修景計画
作品番号5番は奈良県今井町の自動販売機の囲いと、その横に”ばったり”という折りたたみ式の椅子を作りました。写真は、OCTのHPからお借りしていますが、現物をすでに納品してしまっていたので写真での展示となりました。
これは作品としての精度はもちろん高いのですが、建築士会や行政の補助金なども噛んでいるため作品の制作に至るまでのプロセスが他の作品とは段違いに困難でした。これをやり遂げたこの二人の学生は、ある種”仕事”としての流れを感じ、突破することができたことは大きな経験になったのではないかと思います。
ここまでで半分ですが、どれもとても力の入った力作となりました。
学生のうちにチームで作業をしてこういった一つものもを造り上げるのは大きな経験になると思いますし、一生の思い出になるでしょう。社会に出て、大工の技能としてはまだまだ半人前以下だとは思いますが、こういった経験はとても大切になると思います。
WASH建築設計室 日野弘一