既存ドック 福岡にて【既存建物調査】

既存住宅ドックが福岡市で行われました。

WASH建築設計室からは日野が講師役として呼ばれました。

大阪府吹田市からはるばる九州の福岡まで、建物の調査のために行ってきました。

 

前日のうちに山口県におられる再生工房の田尻さんのお宅に泊めていただきました。

そして翌日朝6時、山口県から関門海峡を超えて九州の地へ。

田尻さんは現在、住宅医スクール九州校の校長をされているので講師として

今回の調査に呼ばれていますが、元々は日野と同じ事務所の先輩で兄弟子でもあります。

久しぶりの再会で夜は長かったですが、朝はバッチリ目覚めました。

 

今回の調査は24坪くらいの平屋のお宅です。

私は調査の講師として小屋裏の調査を受け持ちました。

住宅医スクール九州の参加者の方を中心に、14名の大所帯での調査となりました。

まずは大広間に集まって、顔合わせとミーティングを行いました。

 

小屋裏の調査

早速、今回受け持った小屋裏の調査の様子をお伝えしたいと思います。

小屋裏へはだいたいどこかに点検口がありますのでそこを探して進入することになります。

今回は一般的な住宅と同じで押入れの上の天井が外れるようになっていました。

入口が小さく肩幅ギリギリでしたが、なんとか入ることができました。

小屋裏は今日は三人で調査です。

 

小屋裏の全景です。

切妻屋根でシンプルだと踏んでいましたが、屋根に段差が造られており思ったよりは複雑でした。ただ大きな丸太をたくさん使ったいい造りの小屋組だと感じました。

 

劣化調査

小屋裏の調査内容は多岐に渡りますが、まずは劣化の調査になります。

シロアリの蟻害がないか、腐朽している材料はないか、その他問題が生じていることはないか全てしっかりと調べていきます。

 

今回は雨染みのある材料が多く見受けられました。

屋根に段差があると言いましたが、その段の隙間から雨が入り込んでいるようです。

左の写真は段差の部分なのですが光が漏れています。というかここから外の景色が見えます。

(結構いい景色です)

その近くはやはり天井にも大きな水しみが確認されました。

ここは屋根を葺き直すなり、この部分を応急的に塞ぐなりの措置が必要です。

 

こちらも段差の部分です。光こそ漏れていませんが、野地板が変色してしまっています。

こういった部分は”現在進行形で染みている”のか、”前回屋根を葺きかえる前までにできたもの”なのかを判断することが大切です。現在進行形で染みていないのなら問題はないためです。

 

そういう時は木材の含水率計を当てて水分の含有量を調べます。

結果、含水率は低く、今は濡れていないことがわかり一安心です。

 

構造の確認

改修計画に必要な要素は全て調査します。

材料の大きさや小屋組の構成を測ったり、火打や筋交い、金物などの構造要素を確認します。

 

耐震診断で特に忘れがちなのが、土壁の場合の土の厚さです。

厚みごとの評価が違いますので要チェックです。またその土壁が梁まで届いているか、届いていないかも確認する必要があります。

 

他にも、不自然な継手や継手やほぞの外れなど、気になった点は全てチェックです。

右の写真は柱なのですが、不自然な位置で継がれているので確認しています。

 

断熱の確認

断熱の計算を行いますので断熱要素も確認します。

今回は玄関と廊下の天井にのみ断熱材が確認されました。

厚みや種類が特定できる時は種類を確認します。

また外壁は土壁の厚さなどが断熱計算に必要になります。

 

小屋裏では、こういった情報を調査しています。

梁の上を慎重に移動する必要があるので体力的にも精神的にも疲れる調査になりますが、

住まい手が普段見えない場所をお伝えする必要があるので重要な役割です。

 

お昼のミーティング

お昼休みは12時ごろから行います。

大人数ですので、いろんな部屋に分かれて昼食をとりました。

調査の話や普段の仕事の話などで盛り上がります。

 

そして大切なのが調査の中間報告です。

昼食が終わった段階で、各班進捗具合や建物の特徴を報告しあいます。

特に劣化箇所などは建物を通して関連している場合が多いので、床下・小屋裏・地上の調査状況を確認しあうのは大切な意味を持ちます。

 

ここからは小屋裏以外の班の調査の様子をお伝えします。

 

床下の調査

床下の調査も醍醐味の一つです。調査内容は小屋裏とほぼ同じです。

小屋裏と並んで過酷な調査場所の一つですが、小屋裏よりもシロアリや腐朽の被害の可能性が高いためより重要な調査報告となることが多いです。

 

室内の調査

室内ではたくさんの班が活動しています。

まずは平面図を正確に測る採寸調査。平面寸法違うと細かい計画もできませんし、耐震の計算や断熱の計算も全てずれてくるので大切な調査になります。

他に劣化調査やバリアフリー調査、仕上げの構成を確かめる仕上げ調査などがあります。

 

今回は建物が崖地に建っているので、劣化調査のうちの傾斜調査がとても重要な調査となりました。右の写真はその様子で、レーザーレベルを使って建物の傾斜を測定しています。

 

外部の調査

外部でも劣化の調査や仕上げの調査が行われています。

今回は立面図の調査も行いました。

 

終わりに

朝9時から始まった調査は15時ごろに完了しました。

調査後は簡易の報告と意見交換が約一時間行われました。

 

このあと、今回の調査結果を整理して報告書にまとめる作業が始まります。

住宅医スクール九州の方が担当でまとめられるそうですが、なかなか大変な作業になります。

 

ただその報告書は改修計画をより正確で具体的なものにできるものですので、

住まい手さんのためにも、建物のためにもぜひいいものを作ってもらえたらと思います。

 

みなさまお疲れ様でした。

 

 

日野弘一

 

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